みなさん、こんにちは。坂下忠弘音楽事務局の金でございます。

先日の人気投票で第5位を占めたラミレスの「アルフォンシーナと海」についてのインタビューをお送りします。どうぞお楽しみください。

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―たくさんの方々にお答え頂きましたが、結果をご覧になっていかがでしたか?
(坂下)実は予想していました(笑)。というのも、アルバムの曲決めというのは体力を使うんですね。色々とあさって名曲を見つけだすんです。自分がファーストアルバムの曲を決めたときに、「この曲は絶対いいから入れよう」とかではなく、「このシーンにはこの曲がいいだろ」と多様な状況下に自分を置いてそのCDを想定して分散させたので、一曲ずつ違う性格のものになっているんです。だから、一曲だけに8割の方が票を入れたとかではなく全体にばらけてますよね?自分の努力と意図が皆さんと一致したようでなんだか嬉しかったです。ありがとうございます。

―1位のさびしいカシの木も予想していましたか?
(坂下)いや、それは予想外でした(笑)。

―そうでしたか(笑)。その話はまた今度にして、今日は「アルフォンシーナと海」という曲について聞きたいです。まず、これはどういう曲ですか?
(坂下)この曲は、アルゼンチンの作曲家アリエル・ラミレスが書いた歌曲集「アルゼンチンの女たち」の8曲の中の一曲です。日本にはあまり知られていない曲ですが、向こうでは大変有名です。何故ならアルゼンチンの国家的歌姫メルセデス・ソーサが歌ったからです。

―日本で例えると?
(坂下)日本でいう美空ひばりにあたるような方ですかね。フランスのエディット・ピアフのような存在でもあります。フォルクローレというジャンルの歌手です。タンゴのリズムとも似ているし、すこし物寂しい感じがする曲なんです。

―アルフォンシーナとはどういう意味ですか?
(坂下)人の名前ですね。アルゼンチンの有名な女流詩人の。「アルゼンチンの女たち」という歌曲集の中の題材は全員実在していた女性たちなのです。アルフォンシーナは、40代の時にスイスの湖に身投げしたんですよね。自殺だったそうですが原因はわからないと。その人に関する歌なんです。

―この曲との最初の出会いはいつですか?
(坂下)この曲を最初に知ったのは音大3, 4年くらいの時期でした。どこかのアルバムから聞いてずっと好きな曲ではありました。ただ、当時は自分がこれを歌うなんて考えもしなかったんです。まず女性が歌う歌ですし、あと時代的に、当時はクラシック歌手がこういうジャンルを歌うという風潮でもなかったですし。

―なるほど、それではいつこの曲を歌おうと思ったんですか?
(坂下)実は、30歳過ぎくらいにスランプに陥って、1年ほど歌もあまり歌わず、歌をやめようかまで思いました。ずっと歌をやっていていいのかな?もしやるにはお客さんが望む声で歌う必要があるんだと。でもそれが、自分が歌いたい曲と一致しなければいけない。こういった色々なジレンマがあって、色々考えて悩んで、歌おうと決めたのが、このアルフォンシーナ、枯れ葉(youtubeに出てきます)、そして河島英五の酒と泪と男と女(笑)などでした。

―河島英五まで(笑)かなり勇気が必要だったと思いますが。
(坂下)そうですね、その時助けられたのがピアニストの増田みのりさんでした。彼女はNYの留学からちょうど帰ってきて、すごくオープンマインドで、色々と支えてくれたんですよね。「何でもいいじゃん、好きなものを歌ってみなよ」と。そこで性別とか、ジャンルとかの壁を越えた本当の自分が湧き出ちゃったんです。その増田さんと今月3月16日からの日本丸小笠原クルーズでまた共演することになったので、とても嬉しいです。

―そういう経緯があったんですね。でも、様々なジャンルの曲の中でこのアルフォンシーナと海を詳しく聞きたいのですが。
(坂下)はい。実は私、演歌を習ったことがあるんです。すごく前に。学生の時に。まあかじる程度でしたけど(笑)。それで演歌の「こぶし」が身に付いたんですよね。
この演歌のこぶしが何故か向こうのこぶし感に似ていて。西洋の曲をいわゆる「和こぶし」で歌うとおかしくなりますが、アルフォンシーナはおかしくない、むしろ良い感じにフュージョンされたんです。皆さんに「何だか共感できる」という感情を抱いて頂けるのは、そういう要素があるからだと思います。メロディも似ていますしね。

―不思議ですね。地球の反対側だけけどこっちの情緒と似ているなんて。それでは曲の内容
について聞いてみたいと思います。どういうストーリの曲ですか?
(坂下)これは全体的にストーリー性があるというよりも、情況を描いている曲なんです。スイスで身投げしたアルフォンシーナの心境とその海の情況を考えて。実際、歌詞を理解して歌おうとしても難しいんですよね。理解しようとしても離れていってしまうというか。だから歌詞全体の意味をはっきりさせるというよりも、そこに出てくるような情況を表す単語を想像しながら歌いました。海の青さとか、ホラガイとか、乳母とか。いろいろと。

―なんだか難しい感じですね。
(坂下)はい。この曲はかなり霊的なものを感じるんですよね。またアルフォンシーナを一人称として表すときと、二人称として表すときがあります。ぼやけていて、はっきりしない。それがまた霊的な感じ。だから難しいんですよ。波のリズムのような美しくもはかない感じ。

―歌詞を知らずにメロディたけ楽しんでいた私は、愛の歌だと思っていました。アルフォンシーナ!と叫んでいるサビは、アルフォンシーナから捨てられた男の人が彼女を探し求めているのかななと思いました。
(坂下)うーん、アルフォンシーナを呼んでいるこのナレーションも、男性ではなく女性だと私は解釈したんですよね。むしろ、呼んでいるのは身投げした後の彼女自身だと思うんです。自分が自分に話しかけているような。そこの歌詞ってこういう意味なんですよね。「アルフォンシーナ、あなたはいく、あなたの孤独とともに/どんな新しいポエムを探してあなたは行ってしまったのか/風と塩の古代の声は、あなたからその魂を破滅させる/そしてその声は彼女をつれていきつつある。」

―確かにとても霊的な歌詞ですね。しかも一人称二人称が混ざっている。精神分裂のような?
(坂下)そうなんですよ。実際彼女は自殺したじゃないですか。そうやって映画とかによく出てくる海に向かって一歩ずつ入っていく女性のようなイメージ。それを隣で見ていて自分
自身に声をかけている霊としてのもう一人の自分、といったイメージですかね。

―他に好きな歌詞があれば教えて頂けますか?
(坂下)二番の歌詞ですが、「五人の人魚があなたをつれていき、海藻と珊瑚の小道を通っていく、そして光を発するタツノオトシゴたちがあなたのそばをめぐるでしょう」というところです。

―これは死んだ後ですかね?
(坂下)おそらく死んだあとかと。それから「私のために光を暗くしたままにしておいて、海底で眠っている私をそっとしておいて」と。タツノオトシゴとかいるし、海の底というか暗いところにいるでしょうね。そして言います。「彼に言って、アルフォンシーナは戻らないと」。

―海の底の美しい情況となんだか物寂しい感じが両方あります。説明を聞いてからもう一度聞いてみるとスピリチュアルな感じがしますね。最後にテクニカルな質問を一つ。坂下さんの歌を歌う時の綺麗な発音が有名だと思いますが、スペイン語のディクションは何を気にして歌ったんですか?
(坂下)はい。言語って流れがあるじゃないですか。スペイン語の流れで歌うことを意識しました。実はニースに留学していたときにこの曲がとても好きで、いつもコートダジュールの湾に行っては一人で流して聴いていました。すごく合うんですよね。あそこら辺の風景と。その時、ちょうどアルゼンチン人歌手の友達がいたので、色々と歌い方とか発音も教えてもらったんです。スペイン語やイタリア語のようないわゆるラテン系の言語は思っているよりはっきりしていないんです。飛び石のように飛んでいくように歌うのが重要なんだということを学びました。スペイン語特有の巻き舌のRとかもありますが、あまり巻きすぎないで、流れに任せて歌う感じです。

―最後に今回のアンケートに参加してくださったファンの皆様に御礼一言お願いします。
(坂下)みなさんこんにちは坂下です。2015年にリリースさせたこの「HEROism」、業界では2年も経つと古いCDとされてしまいますが、毎日聴いているよ、というメッセージを途切れず頂いていてとても嬉しいです。愛聴盤にしてくださってありがとうございます。セカンドアルバムもあと少しで発売されるのでもう少々お待ちください!ね^^

ーどうもありがとうございました。
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以上となります。お楽しみいただけましたでしょうか?
インタビューに関してご意見、ご提案等ございましたらいつでもご連絡ください。
それでは、次回のインタビューをまたご期待ください!

坂下忠弘音楽事務局

hirosakashitamusicoffice@gmail.com
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